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第63話 魔法学園祭二日目

Author: 黒蓬
last update Last Updated: 2025-04-23 06:00:11

街の広場を色々見て回っていると時刻も夕方に差し掛かる頃になっていた。

幾つかの取引もできて出店を満喫したところで今日は帰ることにした。

カサネさんも魔道具や本などをいくつか購入していたようだ。

ミルドさんの家に戻るとエフェリスさんが今日も美味しい食事を用意してくれていた。どうやらお店も去年より盛況だったらしく一日でほぼ売り切れたため、明日は家族で学園祭を楽しむことにしたらしい。

次の日、ミルドさん達と一緒に魔法学園まで向かいミルドさん達は先に出店を回るということでそこで分かれることになった。

俺達は予定通り、魔法練習場に向かうことにした。

塔まで歩いて行くと20人程の列ができている。塔を使えるのは一度に10人程度らしい。

「細長い塔ですね。これでどうやって上まで行くんでしょう?」

「なんらかの魔法なんだろうけど、俺にはさっぱりだな」

「そういえば人数制限があるみたいですけど、ロシェさんはこのまま乗れるでしょうか?」

・・・た、確かに。考えてなかった。どうしよう。

『考えてなかったって顔ね。気にしなくていいわ。私は先に上っておくから』

そういうと、ロシェの気配が俺から離れて山の上の方へと離れていくのが分かった。自力で登っていったらしい。流石だ。

「もう山の上まで行ったみたいだ。早いなぁ」

「かなりの急勾配ですのに。流石ロシェさんですね」

話しているうちに俺達の順番が回ってきた。

塔の中に入ると、何もない丸い空間で床には魔法陣のようなものが描かれていた。

塔の管理をしている人が「起動しますので動かないでください」と声を掛けて、壁際に合ったパネルのようなものに触れると、一瞬視界がぶれて次の瞬間には先ほど入ってきた入り口が無くなっていた。

「え?」

「到着しました。出口は反対側です」

言われて反対側を見ると確かに入り口と同じ扉が開いていた。

俺達以外にも数人が驚いた様子を見せながら出口から出て行く。恐らく初見かそれ以外かの違いなのだろう。

「何が起きたのか全く分かりませんでした。流石は魔

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    「楽しみにしてます!」 「それじゃ、部屋に案内するよ。こっちだ」ミルドさんが抱えていた荷物を近くに置いて俺達を部屋に案内してくれた。 俺達はエフェリスさんに一礼してからミルドさんの後を付いていく。「こことその隣が空き部屋だ。掃除用具とかはあそこの籠の中にあるから好きに使ってくれ」ミルドさんが案内してくれたのは二階にある突き当りの部屋だった。「ありがとうございます。あと、学園祭のこと後で教えて貰っても良いですか?俺達基本的なこともよく分かってなくて」 「あぁ、構わない。夕食の時にも話題になるだろうから、その時に説明しよう」 「分かりました。お願いします」 「それじゃ、悪いが掃除の方は頼んだ。俺は準備の方を手伝ってくる」そう言うとミルドさんは一階に戻っていった。 部屋を開けてみるとどちらの部屋にも最低限の家具は置かれてあった。元は客間か誰かの部屋だったのだろうか?ただ、やはりしばらく使われていなかったようで、それらの家具は埃を被っていた。「それじゃ、美味しいデザート、いえ食事のために頑張りますか!」 「あ、あぁそうだな」カサネさんがいつになくやる気だ。こんなに張り切っているのを見るのは初めてかもしれない。よほどコロンケーキが楽しみらしい。 そうして夕食前までは各自で部屋の掃除を済ませた。 掃除を済ませて一階に戻ると、キッチンの前に知らない男性が立っていた。「ん?おぉ、あんたらがミルドの連れてきたお客さんか。俺はあいつの父親でカイゼルってんだ。よろしくな」俺達もカイゼルさんに挨拶を返すと、席に着くように勧められた。 言われた通り席に着くと、エフェリスさんが食事を並べてくれた。「お掃除お疲れ様でした。さあさあ食べて下さいな。コロンケーキはデザートでお出ししますね」エフェリスさんが振舞ってくれた料理はどれもとても美味しかった。 デザートだけでなく食事までごちそうを用意してくれたようだ。「とても美味しいです」 「お口にあったようで良かったわ」

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第59話 ミルド達との再会

    聞いたことのある声に振り向くとそこに居たのはやはり、以前世話になったミルドさんとエリネアさんの二人だった。「ミルドさん、エリネアさん、お久しぶりです。俺達は魔導都市がどんなところか興味があって観光に来た感じです。あ、この人は俺の旅の仲間です」 「カサネです。よろしくお願いします」 「俺はミルドだ、よろしく。アキツグさんとは以前ある人の護衛中に一緒になってしばらく同行していたんだ」 「エリネアです。よろしくお願いします」二人は何かの荷物を抱えていた。届け物の途中とかなのだろうか?「にしても観光か、それは良いタイミングで来たな。明日は魔法学園の学園祭だからな。楽しんでいくと良い」 「そうみたいですね。知らずに来たのでびっくりしました。ただ、そのせいで宿屋が全部埋まってしまっていて。どうしようかと思っていたところなんです」 「あぁ、、それはそうだろうな。・・・良かったらうちに来るか?部屋なら余っているが」 「えっ?良いんですか!?」降って湧いた幸運に驚き聞き返す。「あぁ、知らない仲でもないしな。両親も一緒に住んでいるが、二人ともおおらかな性格だから、俺の友人なら気にしないだろう。アンタらが良ければだが」 「俺は良いと思うんだけど、カサネさんはどう思う?」 「皆さんが良ければ、ぜひお願いしたいです」 「そうか。ならちょうど戻るところだし、一緒に来るか?」 「あ、ちょっと待ってください。あともう一人、この子、ロシェッテも一緒で構わないでしょうか?」俺の言葉に、ロシェが姿隠を解いた。周囲に居た人達が軽く驚いた声を出して通り過ぎていく。二人も突然姿を見せたロシェに驚いたようだ。「ハイドキャットか。初めて見たな。アキツグさんの従魔なのか?」 「はい。ギルドで登録はしています。大人しい子なので迷惑を掛けることはないはずです」 「なるほどな。うちの両親は猫好きだし、たぶん大丈夫だと思うぞ」 「良かった」 「あ、あの・・・この子、撫でても大丈夫ですか?」何だかエリネアさんが期待に満ちた目で聞いてきた。初めて見る表情だ。

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第58話 マグザ到着・・・依頼達成?

    ハクシンと別れた後は特に何事もなくマグザまで来ることができた。 マグザは周囲を山に囲まれた窪地に作られた都市だ。 とある魔導士が隕石を落とした跡地に都市を作ったなんて逸話もあるらしい。 魔法学園は名前の由来だけあって大きく街の入り口からも見ることができた。 さらに学園の中には街の外からでも見える高さの塔が立っていた。街に入るとまずはカサネさんの希望で冒険者ギルドに向かった。 冒険者ギルドに入り、カサネさんは素材を売却するためにカウンターへ向かった。 俺は待つだけというのもなんだったので、何となく依頼掲示板を見に行くことにした。そこには様々な依頼が張ってあった。街中の下水道掃除や荷物運び、近辺のモンスター退治や素材採取など色々だ。 と、そこで俺は一枚の依頼に気づいた。「ハーピィ討伐依頼。貴重品の回収必須?」なんだかすごく思い当たる節がある依頼だ。というか間違いない気がする。「何だ兄ちゃん、まさかその依頼を受けるつもりか?止めときな、その依頼は俺達がこれから向かうつもりなんだ。早い者勝ちだから今から受けても無駄になるぜ?」 「え~と、いや、既に終わってるんです。この依頼」そう言って、俺はメギエスタから受け取った懐中時計を取り出した。「な、何だと?・・・確かにその懐中時計、依頼内容の品と同じじゃねぇか。何だよ、先越されたのは俺達の方ってことかよ」その男たちはがっくりと肩を落として、依頼掲示板の方へ戻っていった。どうやら別の依頼を探すことにしたらしい。なんだか悪いことをしたな。 でも、あの様子からまだ他に向かった人は居ないらしい。誰かがハーピィ討伐に向かう前で良かった。「カサネさん、ついでにこの依頼の報告も頼んだ」俺は受付に向かい、依頼用紙と懐中時計をカサネさんに渡した。「え?ハーピィ討伐依頼?・・・なるほど、そういうことですか。分かりました。」理解してくれたらしい。カサネさんは合わせて手続きを済ませてくれた。「それにしても、あのハーピィたちの討伐依頼が出ていたとは。ハーピ

  • 人生の続きは異世界で~交換スキルの代償は金銭NG!?~   第57話 謎の人物とスキルブック

    「いや~助かった。ありがとうな。俺はハクシンってんだ」 「はぁ。俺はアキツグです」 「カサネといいます。よろしくお願いします」ロシェッテに気配も感じさせず突然現れた男は空腹で倒れていたらしい。手軽に食べられるものをとりあえず渡すと、美味しそうにバクバクと食べながらそう言った。「いや~それにしてもハーピィ相手に会話ができるなんてアンタすげえな」 「えっ!?・・・あ、いや、その撃ち落としたと思ったハーピィが生きてて可哀想になってしまったから、話し合って助けていただけですよ?」思わぬ発言に驚いてしまったが、咄嗟に言い訳する。 確かにハクシンが出てきた茂みは近かったが話声を聞けるほどではなかったと思う。スキルのことは話せないし、ここは何とか誤魔化したかった。「いやいや、俺は耳だけは良い方なんでな。ばっちり聞こえてたぜ。まぁ、安心しなって。アンタは恩人だからな。誰にも言ったりはしねぇよ」だめだったらしい。彼の言葉は嘘を言っているような感じではなかった。 まぁ誰にも言わないと言っているし、詳しく聞き出そうとしてくるわけでもなさそうだったので諦めることにした。「そうですか。すみませんが秘密でお願いします」 「あぁ、もちろんだ」 「それで、ハクシンさんは何故こんなところで空腹で倒れていたんですか?」周りは山岳地帯で近くに街があるわけでもない。彼は見た感じ特に持ち物もなさそうだった。マジックバッグを持っている可能性はあるし、見た目だけではあてにならないかもしれないが。「あぁ、山に籠って修行をしてたんだがな。集中していたら食い物が無くなっていたことをすっかり忘れちまってな。いや~面目ない」 「修行ですか。この山にはハーピィたちが住んでいるようですが、大丈夫だったんですか?」 「あぁ。あんたも聞いたみたいだが、奴らは人を襲ったりはしねぇよ。襲われても負けねぇ自信はあるけどな。ったく、師匠も面倒な課題を出しやがるぜ」ハクシンは師匠から出された課題で山籠もりをしていたらしい。 食べるのも忘れるほど集中していたらしいが、一体どん

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